| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-016 (Poster presentation)
イノシシは日本では本州・四国・九州に生息し、環境省の調査では生息域が40年間で約1.9倍に拡大した。分布拡大は本土のみならず、その周辺の島嶼部でも起こっている。全国の410の有人島と、環境省の生息メッシュを重ね合わせてみると、イノシシが生息する島の数は、1978年には29島であったものが、2003年には128島、2011年には193島、2014年には224島となり、半数以上の有人島でイノシシの生息が確認されている。橋などでつながっていない島へは海を泳いで分散したと考えられている。
本土か島嶼かに関わらずイノシシは農業・人身・生態系被害を起こすため、柵による侵入防止と捕獲による加害個体の排除や低密度化が必要である。生息密度が不明なまま捕獲などの対策を行っているため、必要な努力量よりも少ない捕獲圧をかけている場合が多い。そこで、対策の基礎情報として、島嶼でのイノシシの生息密度を明らかにする目的で自動撮影カメラによる密度推定を行った。
本研究では個体識別を伴わない自動撮影カメラによる密度推定手法の一つであるREST法を実装した。調査地は、住民からの聞き取りにより2010年以降にイノシシが侵入したと考えられる兵庫県姫路市の有人島4島(西島・坊勢島・家島・男鹿島)と南あわじ市の沼島である。調査期間は2020年7月から2021年10月までで、原則尾根上に15台のカメラを設置し、約2か月に1度点検を行った。個体数推定は約2か月単位で実施した。その結果、1km四方の推定密度は坊勢島の約30個体から家島の約100個体と島により差が見られた。同時に、密度指標である地表面の掘返しを2つに分類しカウント調査した。イノシシの掘返しと思われるものと、その内長径が50㎝以上、深さが5㎝以上のものである。1m四方の区画を踏査ラインの左右に設定し、有無を記録した。10m(20区画)ごとに掘返し有の頻度として算出し、REST法で推定した密度を説明変数とした一般化線形混合モデルで解析を行った。