| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-017 (Poster presentation)
アズキを資源とするアズキゾウムシとその寄生蜂Heterospilus prosopidis(Hp) および Anisopteromalus calandrae(Ac)の実験系は、カオスや準周期など複雑な個体群動態をもたらす。寄主―寄生蜂1種系とおよび寄主―寄生蜂2種系にそれぞれニコルソンベイリー型のモデルを当てはめパラメーター推定・比較した結果、Acの種内干渉(安定化効果あり)がHpの導入により低下したため動態が不安定化したことが示唆された。次に行動観察実験により、Ac個体間の干渉行動の頻度がHpの存在下では少なくなることを確かめた。さらに個体群レベルの密度操作実験によって、Hp密度が高いとAcの干渉パラメーターが低減することを確認した。
次に、2種の寄生蜂間の可塑的なニッチ分化を定量化した。羽化時期に注目し、2種間のd/w(d: 2種のニッチの平均値の差、w: ニッチの標準偏差)を算出した。その結果、同種または他種の密度が高くなるほど羽化時間が一方の種では早まり、反対に他方の種では遅延して、その差dおよびニッチ分化d/wが増大することが判明した。さらに、競争係数は両種とも種内競争より種間競争の方が弱く、2種が共存しやすいことが示された。また、2種は個体数と体サイズでそれぞれ種間競争が非対称になっていた。このように、種間で互いに異なる競争的有利が可塑的に生じるため、不安定ながらも共存できるという実態が見えてきた。