| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-028  (Poster presentation)

シイタケ栽培が森林のキノコバエ類と寄生蜂群集に及ぼす影響
Effects of edible fungi cultivation on fungus gnat and parasitoid assemblages

*末吉昌宏(森林総合研究所)
*Masahiro SUEYOSHI(FFPRI)

原木シイタケ栽培はシイタケ菌糸を蔓延させた腐朽木(ホダ木)を人工林もしくは天然林内に並べたホダ場で行われる。一般に、人工林は生物多様性が低いとされ、また、常緑広葉樹林も林床植生は乏しく、生物多様性は低い。これらの林床にホダ木を持ち込むと林床の構造が複雑になり、ホダ木が他のきのこ類や昆虫に消費されたり、それらの住処となったりするため、ホダ木もしくはホダ場は林内の生物の群集構造や食物連鎖を豊かにする生態学的な役割があると考えられる。しかし、ホダ場にはナカモンナミキノコバエ(ナカモン)などシイタケ害虫の個体数が高く維持されるため、その個体密度をできるだけ低く抑えることが同時に求められる。
ホダ木あるいはそれに関連するきのこ由来のキノコバエ類群集、およびそれらのキノコバエ類の捕食者・寄生者群集を明らかにするため、大分県日田市のホダ場で採集したシイタケ子実体から得たナカモン幼虫を飼育し、寄生蜂の成虫を得た。さらに、日田市内のホダ場および原木栽培を行っていない人工林や天然林14箇所それぞれに100m2の調査地を設置し、キノコバエ類・天敵の個体数を調査した。調査方法として飛翔昆虫類を捕獲する水盤トラップ、粘着トラップと捕虫網を用いた。また、調査地内で水平円網を張るクモ類の巣網を観察し、それに捕らえられた昆虫類を計数した。
ナカモンの寄生蜂としてシリボソクロバチ科およびハエヤドリクロバチ科の成虫を得た。これらによる寄生率は1~2割程度であった。各調査地で得られたキノコバエ類と寄生蜂類の個体数を森林タイプおよびホダ場の有無で比較すると、各種トラップ、捕虫網、クモの巣網の獲物いずれでも、スギ林よりも広葉樹林で多い傾向が見られた。ナカモンは全体的に人工林で多く、人工林・天然林ともにホダ場で多かった。ハエヤドリクロバチ科の個体数は天然林に多く、人工林の調査地に関して、ホダ場でより多い傾向があった。


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