| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-030  (Poster presentation)

機能群とタクサでの群集構造決定要因の違い:動物プランクトンを用いた検証
Differences in the factors affecting taxon and functional community structures : An examination with zooplankters

*鈴木碩通(東北大学・理・生物), 一柳英隆(水源地環境センター), 占部城太郎(東北大学・生命)
*Hiromichi SUZUKI(Tohoku Univ. Dept. Biology), Hidetaka ICHIYANAGI(WEC), Jotaro URABE(Tohoku Univ. Life Science)

局所生物群集は、巨視的に捉えると、分散フィルターとニッチフィルターによりその構造が決定される。しかし、それらフィルターの役割は生物群集の構造単位によって異なり、分類群を単位とした群集構造では分散フィルターが、機能群を単位とした場合にニッチフィルターがより支配的な影響を及ぼすと考えられる。このような群集構造に果たす各フィルターの相対的な役割を解明するためには、多数の離散的な群集を対象にした比較研究が不可欠である。しかし、そのような研究は乏しい。そこで、本研究では群集調査が容易であり、分散能力は種によって異なる一方で、形質は非常に類似したものが多い動物プランクトンを対象に、分類群を単位とした群集構造と機能群を単位とした群集構造との間で分散フィルターとニッチフィルターの相対的重要性が異なるか検討した。
解析は河川水辺の国勢調査によって調査された、全国87のダム湖における動物プランクトンの群集データを用いて行った。まず、各ダム湖におけるタクサの在不在データ及び、タクサを体サイズや食性といった形質によって分類した機能グループごとの在不在データを用い、分類群群集と機能群群集のダム湖間での非類似度を算出した。その後、動物プランクトンの分散に関わる要因とニッチに関わる要因を抽出し、ダム湖間での群集構造のばらつき(分散)に対するそれら要因の説明量を分散分割によって算出した。その結果、分類群群集では分散に関わる要因とニッチに関わる要因の説明率がほぼ等しくなる一方で、機能群群集ではニッチに関わる要因の説明率が分散に関わる要因よりも大きくなることが分かった。さらに、partial dbRDAによって説明変数レベルでの解析も行なった結果、機能群では魚類群集やダム諸元の変数の説明率が分類群よりも高くなっていた。これらの結果から、機能群ではニッチフィルターが群集の構造決定に対して、より重要であることが示された。


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