| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-035 (Poster presentation)
地域の生物相は環境変動や構成種の個体群変動などに応じて変化するが、その変化を把握することで環境変動の影響の評価が可能となる場合がある。鳥類は移動能力が高く、環境変動に応答して生息地を移動するため、ファウナの変化を検出しやすいことが知られている。そこで、1990年代後半に四国地域の多地点で調査された鳥類相調査の結果を用いて、2010年代後半に再調査を行い、結果を年代間で比較して、鳥類相の変化を明らかにするとともに、その要因について検討した。
徳島県、愛媛県、高知県の11箇所において、1998年から2000年に陸生鳥類の調査が行われた。調査は鳥類の繁殖期である5月中旬から7月上旬に3kmのラインセンサスと2地点のポイントセンサスを併用して種ごと個体数が記録された。2017年から2019年に同じ方法で調査を行い、年代間で調査結果を比較した。1箇所あたりの出現種数は1990年代には12種から28種、2010年代には17種から29種であり、調査地を平地と山地に区分すると、平地(6箇所)では2010年代には有意に種数が多かったが、山地(5箇所)では2010年代の方が種数は少なかった。夏鳥の種数は平地で1990年代には1種から6種、2010年代には3種から6種、山地では1990年代には4種から9種、2010年代には5種から7種で大きな変化はなかった。種別に見ると、リュウキュウサンショウクイが1990年代には記録がなかったのに対し、2010年代には平地、山地とも増加し、外来種のソウシチョウは2010年代には山地で増加した。一方、山地ではウグイスの個体数が2010年代には減少しており、コマドリ、ヤブサメ、ホトトギスも減少に近い状態であった。ウグイス、コマドリ、ヤブサメの減少はシカの分布拡大と採食圧による下層植生の衰退、ホトトギスは宿主であるウグイスの減少によるものと推測された。