| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-038  (Poster presentation)

2種の音響計測システムを併用したニホンアマガエルの多音源定位・分離解析
Localization and separation of calling frogs (Dryophytes japonicus) by multiple audio-recording systems

*合原一究(筑波大学), 武田龍(大阪大学)
*Ikkyu AIHARA(Univ. of Tsukuba), Ryu TAKEDA(Osaka Univ.)

動物は求愛、縄張り維持など、さまざまな目的で鳴き声を発する。一般に、動物は他個体の鳴き声を聞いているため、その機能の理解には個体同士のコミュニケーションの分析が必要である。特に野外環境では複数の個体が共存しており、それらの鳴き声を正確に識別する技術が求められている。
 本研究では、繁殖期にオスがメスを呼ぶ目的で鳴き声を発するニホンアマガエルを対象とする。ニホンアマガエルは繁殖期になると、田んぼなどの水場で多くのオスが合唱する。オス同士はメスを巡るライバル関係にあるので、その行動戦略の理解には個体ごとの鳴き声の識別が必須となる。
 我々は、独自に開発した音声識別装置「カエルホタル2」(Awano et al 2021)とマイクロフォンアレイを併用した野外調査を実施した。まず、ニホンアマガエルの空間分布をカバーするように音声識別装置を配置し、その発光パターンを分析することで個々のオスの空間配置と発声タイミングを推定した。次に、マイクロフォンアレイの録音データに、音源到来方向の推定手法であるMUSIC法と音声分離手法である独立ベクトル分析法を適用することで、オスの空間配置と発声タイミングを推定した。さらに両者を比較することで、多くの場合、高い精度でオスごとの鳴き声を識別できていることを示した。最後に、上記の解析から得られたニホンアマガエルの合唱構造を紹介し、提案手法を適応可能な動物種と計測環境を議論する。


日本生態学会