| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-052  (Poster presentation)

南大東島に自然移入したウグイスのさえずり特性:島的なさえずりに変化しているか?
Acoustic characteristics of songs in recently established population of Cettia diphone on an oceanic island: Has the song changed to ‘insular song'?

*濱尾章二(国立科学博物館・動物)
*Shoji HAMAO(Natl. Mus. Nat. Sci., Tokyo)

鳥のさえずりは生態的要因、社会的要因に応じて進化する。新たな土地に進出した鳥のさえずりが変化していく過程を明らかにすることは、さえずりの進化の理解につながる。ウグイスでは島嶼個体群でさえずりが単純化することが知られている。この変化は、人為的移入から約80年後には生じていた例がある。南大東島では、一度絶滅したウグイスが2000年頃に再度進入し繁殖している。このウグイスは、形態と遺伝解析から南西諸島由来ではなく、本州以北に由来すると考えられている。
 南大東島に進入したウグイスのさえずりは、元の個体群の特徴を持っているであろうか。あるいは、島嶼個体群の特徴である単純なものに変化しているであろうか。この疑問に答えるために2019年南大東島でさえずりを録音し、北海道、新潟、埼玉、奄美群島のものと比較した。また、南大東島に移入して間もない2004年のさえずりを入手し2019年のものと比較した。分析はさえずり前半部(ホーホケキョのホー)がひと続きのH型と(ホーホホホと)断続するL型の二つのさえずりタイプに分けて行った。
 音響学的分析の結果、南大東島の2019年と2004年のさえずりには差異が認められなかった。南大東島のさえずりは、H型では本州以北のものと差がなく、奄美群島のものより複雑であった。L型は本州以北のさえずりより単純であり、奄美群島のものとは差がなかった。もっともよく用いられる、H型でさえずり後半部に3つの音素(ホ・ケ・キョ)を持つさえずりについて音素間の周波数変化を調べたところ、南大東島では他の地域と異なり2つ目の音素の周波数が低いパターンが大半を占めるという特徴が顕著であった。これらのことから、南大東島では侵入後さえずりの変化は起きておらず、創始者効果で特徴的なさえずりが用いられていると考えられた。


日本生態学会