| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-053  (Poster presentation)

社会性と集団多型:オタマジャクシの血縁者識別に及ぼす環境と学習の影響 【B】
Grouping and genetic polymorphism: environmental and learning influences on kin recognition in tadpoles 【B】

*長谷和子(東大院・総合文化)
*Kazuko HASE(The University of Tokyo)

誰が仲間なのか、動物たちはどのように識別しているのだろうか?カエル類では複数の種で血縁認識の報告がある。水中で生活する幼生(オタマジャクシ)が群泳する姿は頻繁に観察されるが、この群泳(群れる相手)にも、血縁選好性があることが知られている。オタマジャクシは捕食回避や採餌効率のため時に強く集合するが、他方で、餌不足などで種内競争が高まれば、共食い行動が生ずることがある。協力か競争か–といった種内関係は、集団構造によっても、個体の発達段階によっても変化する。オタマジャクシの血縁者識別が維持されているのは、協力による利益からというより、血縁競争の緩和のため(兄弟に対する共食い忌避等)の方が多いだろう。
 発表者は、オタマジャクシにおける血縁者識別における学習と環境条件について、ニホンヒキガエル(Bufo japonicus)とヤマアカガエル(Rana ornativentris)を対象に調べている。これまでの研究により、R. ornativentrisは血縁者を識別するが、学習により大きく変化することが明らかになった。R. ornativentrisのオタマジャクシは、共に育った仲間に対しては、競争相手と判断していないようだった。このような可塑性を示す背景には、非兄弟であっても集団の個体間の遺伝的類似性がもともと高いため、であろうことが予想される。そこで、対象集団の遺伝的構造を調べるため、RAD-seqを行った。また、兄弟だけのグループと非兄弟と混ぜたグループを5週間観察し、開発したSNPマーカーを用いてグループ内の遺伝的類似性と群泳選好性の関係を調べた。


日本生態学会