| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-059  (Poster presentation)

外来種グリーンアノールを対象とした忌避音声の開発および慣れの検証
Attempt to deter alien green anoles while considering habituation to acoustic stimuli

酒井理(カリフォルニア大学), *岩井紀子(東京農工大学)
Osamu SAKAI(UCDavis), *Noriko IWAI(TUAT)

特定外来生物グリーンアノールは、小笠原諸島に侵入して固有の生態系に大きな脅威を与えており、より効果的な防除方法が求められている。本種は優れた聴覚を持つため、その聴覚を利用した防除が効果的である可能性がある。しかし、音声に繰り返し暴露されると慣れが生じることも考えられる。本研究は、人工的な音声を作成し、音声による本種の忌避効果、および繰り返しの暴露による慣れの有無を検証した。シンプルな音源として草刈り機のみ、複雑な音源として草刈り機の音声に加えて様々な生物的・非生物的音声を混在させたものを作成し、無音の場合と合わせてグリーンアノールの行動を比較した。実験は防音室内のアリーナで行い、アリーナ上部のスピーカーから音声を流した。アリーナの床に配置した静置ケースにグリーンアノールを入れ、このケースを出てから、無音下もしくは音声を流している30分間に定位した場所を記録した。作成した音源はどちらもグリーンアノールによる忌避効果が認められ、スピーカーから24 cmまでの範囲(直近範囲)に定位する時間が無音に比べて有意に短くなった。また、アリーナの上辺に到達する個体の割合は無音で49%に対し、シンプルな音源で16%、複雑な音源では4%と有意に減少した。音源への暴露を4日間連続して行ったが、この間に直近範囲における定位時間に有意な変化は認められず、慣れによる忌避効果の減少はないと考えられた。本研究から、人工的な音声、特に複雑な音声を流すことで、グリーンアノールを特定の場所から遠ざけられること、その際慣れは起こりにくいことが明らかとなった。保全区域に音声を流すことで本種の侵入を防ぐなど、防除への応用が期待される。


日本生態学会