| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-060  (Poster presentation)

なぜ魚はプラスチックを食べてしまうのか?バイオフィルム付着による誤食機構の検証
Why do fishes ingest microplastics? testing biofouling hypothesis

*八木光晴, 川口俊哉, 小林恒文, 清水健一(長崎大学)
*Mitsuharu YAGI, Toshiya KAWAGUCHI, Tsunefumi KOBAYASHI, Kenichi SHIMIZU(Nagasaki Univ.)

近年、魚類によるマイクロプラスチック(MPs)の誤食が世界各地の海域で報告されているが、なぜ誤食してしまうのか?そのメカニズムはよく分かっていない。そこで本研究は、MPsが野外環境に曝露されるとその表面にバイオフィルムが付着することに注目し、この生物過程が魚類のMPsの誤食行動を誘引する、という仮説を立てた。そして、この仮説から検証可能な予測をして、魚類の誤食メカニズムの一端を解明することを目的とした。方法は、野外環境水で培養した曝露MPs(培養期間:0~24週間)を用いて、①定期的にMPs表面のバイオフィルムの付着量を調べる実験と②曝露MPsをキンギョに与える誤食実験の2つを行った。①は、MPs表面の画像撮影とクリスタルバイオレット染色による吸光度測定を実施し、②は曝露MPsをキンギョに与え、培養期間ごとに10分間で誤食が起きるか否か、そして誤飲時間を調べた。その結果、培養期間の増加とともにMPs表面へのバイオフィルムの付着量は増加した(p<0.001)。誤食実験では、培養期間とMPsを口に含む(誤飲)割合と、誤飲時間に有意な正の相関があった(誤飲割合:p<0.05、誤飲時間:p<0.01)。しかし、MPsが消化管内に存在するという誤食行動は見られなかった。以上の結果は、仮説の一部を支持しており、プラスチックが陸域から捨てられ水域を漂う間に、魚がそれを餌と間違えてしまいやすくなることを示している。


日本生態学会