| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-062  (Poster presentation)

トラップカメラで収集したデータのばらつきについて
Variations in data collected by camera-trap

*森元萌弥(特非WSJ)
*Tomoya MORIMOTO(Wildlife Service Japan (NPO))

自動撮影カメラの撮影データは、様々な分析や意思決定に用いられている。しかし、撮影データが観察対象となる生物種や個体群のパラメータをどの程度正確に反映するのか、あるいはどのように偏るのかについては知見が乏しい。本調査は、同一条件で設置された自動撮影カメラの撮影データのバラツキを観察する目的で、1地点に自動撮影カメラを2台設置し、撮影結果を8地点計16台で比較した。
自動撮影カメラは撮影範囲が重複しない形で1本の立木に2台、地表から90㎝の位置に地表と水平に設置した。このペアとなる自動撮影カメラを同機種同設定で設置し、電池及びSDカードは同じ機種を用いて動画撮影した。自動撮影カメラは2019年2月から1年間撮影を継続し、電池とSDカードを月1回交換した。8地点は最も離れている地点で約2kmの距離であった。自動撮影カメラや記録データに異常が見つかった場合、以降のデータは比較から除外した。
撮影された哺乳類種のリストをペアとなる自動撮影カメラの間で比較すると、8地点すべてで異なっていた。各地点で撮影された哺乳類種のうち、ペアの自動撮影カメラ間で共通して撮影された種の割合は25.0%から88.9%であり、平均で57.0%であった。
最も撮影の多かった哺乳類はシカであった。8地点でシカの撮影回数を比較すると、ペアとなる自動撮影カメラの間で1.1倍から11.0倍の差が見られ、平均で3.54倍の差があった。
同一地点、同一環境、同一個体群を対象として設置した場合でも、自動撮影カメラの撮影データは大きくバラつく事が確認できた。自動撮影カメラの撮影結果は、周辺環境の微細な差に大きく影響を受ける可能性がある。自動撮影カメラの撮影データの比較や、個々のカメラデータが重みづけされるような解析では、結果が観察対象のパラメータを反映させたものなのか、撮影データのバラツキなのかを明らかにできるよう、データのバラツキを前提とした調査計画を策定する必要がある。


日本生態学会