| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-063 (Poster presentation)
縄張り行動とは、動物の個体またはグループが、直接の防衛や誇示を通じて、ある空間を多少なりとも排他的に占有する行動である。縄張り行動は、資源や交尾の機会の安定した確保につながり、適応度に直結する行動であると考えられる。トンボ目の昆虫では多くの種でオスが縄張りを持つ。トンボは昼行性であるため、オスは昼間に縄張りをつくり、夜間は繁殖場所から離れたねぐらで過ごす。よって、通常、縄張りは毎日つくられ、その日のうちに解消される。トンボのオスによって縄張りがつくられる場所には、ほとんど毎日のように縄張りオスが占有している地点もあれば、ごくたまにしか縄張りが作られない地点もある。本研究では、人工的な池を野外に設置し、その環境条件を実験的に操作することにより、トンボがどのような環境を基準として縄張り地点を選択しているかを明らかにすることを目的とした。
野外に人工池を設置し、トンボの止まり場となる基質の条件を変える操作を行った。止まり場となる基質として支柱を用意し、この支柱の地面に対する角度および本数という2つの条件を操作した。各人工池における縄張りオスの個体数をそれぞれ記録した。その結果、支柱の角度は、縄張りオスの個体数に対し有意な影響を与えてはいなかった。一方で、支柱の有無や支柱の本数が、縄張りオスの個体数に対して影響を与えていた。すなわち、止まり場となる支柱がある人工池は、ない人工池に比べ、縄張りオスの個体数が多かった。そして、支柱の本数が増えると縄張りオスの個体数が増加することが明らかになった。本研究により、トンボによる縄張り地点の選択においては、トンボの止まり場となる基質の有無および数が基準として用いられているということが示唆された。