| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-066  (Poster presentation)

スズメ目鳥類における尾脂腺由来の卵表面脂質
The lipids on eggshell surface  derived from uropygial gland in Passerine birds.

*佐藤敦, 佐川南美, 竹中万紀子, 松井晋(東海大学生物学科)
*Atsushi SATOH, Minami SAGAWA, Makiko TAKENAKA, Shin MATSUI(Tokai Univ.)

 鳥類の卵殻表面では細菌の侵入を防ぐ様々な防御機構がみられる。ツカツクリ科などの多くの鳥類では、卵殻表面の構造が細菌の侵入を防ぐことが報告されている。別の防御機構としては、ヤツガシラの尾脂腺分泌物に含まれる抗菌物質が卵表面に移行して、卵内の胚を細菌感染から守ることも知られている。他の鳥類においても、卵殻表面で親鳥の尾脂腺分泌物が細菌感染リスクを低減する機構が備わっている可能性があるが、ヤツガシラ以外の鳥類ではほとんど調べられてこなかった。そこで本研究では、スズメ目鳥類であるスズメ Passer montanua、シジュウカラParus mionrおよびヤマガラ P. varius の3種の卵表面の脂質定量を行ったところ、シジュウカラでは卵表面の脂質量は産卵期よりも抱卵期の方が有意に増加していることが明らかになった。 以上の結果を受け、本研究では、シジュウカラと同じスズメ目鳥類であるスズメを対象に、抱卵期の卵殻表面に存在する脂質の定性分析を行い、卵表面に存在する脂質の由来を明らかにすることを目的とした。 スズメ卵については、2019年5月初旬から8月下旬までの期間に、東海大学札幌キャンパスとその周辺施設に巣箱を設置し、産卵期に1巣あたり1卵を採取した。また、産卵期や抱卵期に捕食者による攪乱などで放棄された巣から残された卵を採取した。巣箱を利用する親鳥を捕獲して尾脂腺分泌物を採集した。これら採取した卵表面および尾脂腺分泌物の脂質をシルカゲルTLCによって分画し、得られたwax ester画分を常法により脂肪酸メチルエステルとした。これらの脂肪酸メチルエステルをGC-MSにより分析した結果、抱卵期の卵殻表面由来のサンプルにおいて、尾脂腺に特徴的な3-メチル脂肪酸エステルと思われるピークを確認することができた。このことから、スズメの抱卵期における卵表面の脂質の一部は尾脂腺由来であることが示唆された。


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