| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-070 (Poster presentation)
冷温帯に生息する哺乳類にとって、低温に晒される冬季は厳しい環境である。さらに積雪はさまざまな行動を制限することから、多雪地域の冬季はより厳しい環境であると考えられる。このような季節に応じた環境変化に対応するために、哺乳類は活動性を変化させることがある。その程度は種によって異なると考えられるが、種間比較については十分におこなわれていない。そこで本研究では、多雪地域の冬季における哺乳類の活動性をカメラトラップによって評価した。
調査は山形県鶴岡市に位置する山形大学農学部付属上名川演習林付近でおこなった。この地域の冬季における最大積雪深は200-300cmである。動物の活動性に関するデータを得るために、2019年1月から2021年8月まで林道沿いにカメラトラップを設置した。各月における種ごとの撮影頻度を季節(初冬(11-12月)、仲冬(1-2月)、晩冬(3-4月)、冬季以外)で説明する一般化線形混合モデル(GLMM)によって解析し、冬季における各種の活動性を検討した。
カメラトラップの結果、13種の哺乳類を撮影することができた。撮影枚数の少なかったシカとイノシシ除いた11種を対象にしたGLMMから、全体としては仲冬に撮影頻度が落ちるものの、種レベルでみると撮影頻度が冬季にほとんど落ちないグループ(キツネやテン、ノウサギ)、やや落ちるグループ(ニホンザルやタヌキ、ハクビシンなど)、大きく落ちるグループ(ツキノワグマ、アナグマ)の3グループにおおまかに分けられた。また、冬季に撮影頻度がやや落ちるグループの中でも、初冬から晩冬にかけての撮影頻度の変化パターンは種によって異なっていた。多雪地域での越冬にともなう活動性の変化は、種によって異なると考えられる。