| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-101  (Poster presentation)

ハチク群落において10年間のデータから明らかになった自己間引きと隔年の成長リズム 【B】
Self-thinning dynamics and biennial growth rhythm are found from a 10-year monitoring of a clonal population of Phyllostachys nigra var. henonis 【B】

*小林慧人(森林総研関西, 京大・森林生態), 北山兼弘(京大・森林生態), 小野田雄介(京都大学)
*Keito KOBAYASHI(FFPRI Kansai, Kyoto Univ. Forest Ecology), Kanehiro KITAYAMA(Kyoto Univ. Forest Ecology), Yusuke ONODA(Kyoto Univeristy)

単純同齢の植物個体群において、成長とともに個体群密度が低下し、平均個体重と個体群密度との関係は両対数グラフ上で傾き約-3/2の直線で近似されるという法則性がある。この法則を自己間引きの法則と呼び、一年生の草本植物から多年生の木本植物に至るまで様々な植物で成り立つ。しかし、クローナル植物においては、ラメット間で炭水化物や無機塩類などが共有されるため競争が弱く、またラメットの枯死だけでなく加入もあるため、自己間引きの法則に相当する法則性が成立するかどうかよく分かっていない。本研究では、10年間にわたり毎年1回毎竹調査が行われてきた京都府京田辺市のハチク(Phyllostachys nigra var. henonis)林(プロットサイズ20m×35m)のデータを解析し、クローナル植物において自己間引きの法則性が見られるかを検証した。10年間で、ラメット(竹稈)密度は低下し、また竹稈の平均乾燥重量は増加した。10年間の平均竹稈乾燥重量と竹稈密度の関係は、両対数グラフ上で負の相関があり、統計分析ソフトRのsma関数を用いて計算した結果、その傾きは-2.6 (95% 信頼区間: -3.7, -1.8) であった。ハチクは、経年的に肥大・伸長成長しないにもかかわらず、古い小さな稈を新しい大きな稈に置き換えるという、樹木とは全く異なる形により、自己間引きしていることが分かった。また既報の樹木データと比較すると、調査したハチク林では密度あたりの地上部バイオマス蓄積量が高いことも分かった(回帰式の切片が大きい)。これは、クローナル植物であるハチクが隣接するラメット間で過度な競争を避け、空間を効率良く利用することができていることに起因するのかもしれない。また、10年間のデータを通して、加入する竹稈の数には、気候条件では説明できない明瞭な隔年の周期性が見出された。


日本生態学会