| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-102  (Poster presentation)

雌雄異株の先駆樹木アオモジ同齢集団における繁殖個体のサイズと空間分布
Size and spatial pattern of reproductive individuals in a cohort of a dioecious pioneer tree species Litsea cubeba

*川口英之(島根大学)
*Hideyuki KAWAGUCHI(Shimane Univ.)

 鳥取県西部の広葉樹林皆伐地に翌年発生したクスノキ科の先駆樹木アオモジの実生の位置を記録し、9年後までの樹高と生残および着花と性を測定した。アオモジは近年、分布拡大が報告されている。9年後の樹高は最大10.5m、平均5.6mであった。4年後に最初の着花個体が確認された。着花を開始した個体の多くは毎年着花し、性転換は観察されなかった。新たに着花した個体は最初雄が多かったが、その後は雌が多く、まず雄が着花し雌は遅れて着花した。性比は最初雄に偏ったが、その後は雌に偏った。着花を開始する樹高の平均値は、最初の年は差がなかったが、その後は雄のほうが小さかった。雄の着花開始樹高は年とともに小さくなった。雄は被圧された状態におかれると、小さな樹高でも着花する傾向があった。着花を開始する前の樹高成長率は最初雄のほうが大きかったが、次第に雄のほうが小さくなった。L関数を用いて分布様式を解析した結果、初期に全体は集中分布し、集中度は距離が小さいほど高かった。その後、小さい距離の集中度が低下し、集中斑が明瞭となり、密度依存的な競争と死亡が示唆された。雄は集中分布し、集中斑が示されたが、雌の集中度は低く、集中またはランダムであった。ランダムラベリングにより、アオモジ全体の分布の上で死亡との分布相関をみると、雄は独立または同所的、雌は排他的であった。つまり雌のまわりで死亡が少なく、相対的に雄のまわりで死亡が多かった。密度が高く競争が強い条件では雄である確率が高いことが考えられた。着花個体の密度が低い初期において雄への性比の偏りは繁殖の成功度を高め、その後は生残した雄が着ける大量の雄花が雌への性比の偏りを補償して大量の種子が生産されるだろう。アオモジの分布拡大地域では、しばしば実生が大面積で高密度に発生している。伐採などの攪乱によって分布拡大するのに、大量の種子が生産される雌への性比の偏りは都合がよいのかもしれない。


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