| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-113 (Poster presentation)
小笠原諸島のムラサキシキブ属は小笠原諸島全体に分布するオオバシマムラサキ(以下オオバ)と、父島列島の乾性林にのみ分布するウラジロコムラサキ(以下ウラジロ)、シマムラサキ(以下シマ)の3種に分化している。表現型やSSRマーカーを用いた先行研究より、母島列島のオオバは葉の星状毛の有無、開花期、個体サイズなどが異なる複数のエコタイプに分化していることが明らかになっている。本研究では、小笠原諸島のムラサキシキブ属3種を対象にRADシークエンスを行い、種およびオオバ種内のエコタイプ分化のパターンを調べた。
解析に用いた集団は種、エコタイプ、地域が異なる、ウラジロ(兄島、父島)、シマ(兄島、父島)、オオバ(兄島、父島、聟島有毛、聟島無毛、母島無毛、母島有毛夏咲、母島有毛秋咲、母島有毛矮性、妹島無毛、妹島有毛矮性)の14集団である。これらの14集団は、Neighbor-net解析では種、エコタイプ、地域に対応した9つのグループに分けられた。ADMIXTURE解析では、オオバ母島有毛夏咲のグループが、オオバ母島無毛とオオバ母島有毛秋咲の2つのクラスターの混合となり、8つのクラスターに分けられた。このオオバ母島有毛夏咲は母島における上述の2つのクラスター間の交雑に由来すると考えられた。Mr.Bayesを用いた系統解析では、ウラジロ+シマと、オオバの大きく2つのクレードに分かれた。オオバのクレードは、父島+聟島無毛と、母島+聟島有毛のサブクレードに分かれた。さらに、母島+聟島有毛サブクレード内はエコタイプごとに分かれ、聟島有毛は母島有毛秋咲と同じクレードに含まれた。聟島列島の2タイプは父島列島と母島列島から長距離散布によって移住したと考えられた。小笠原諸島のムラサキシキブ属が、種、エコタイプ、地域によって分かれること、またそれらの間の詳細な系統関係と分化パターンが明らかとなった。