| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-115 (Poster presentation)
高い生物多様性を誇る南米のアンデス-アマゾン地域においても、他地域と同様、伐採や火入れなど人為撹乱の影響により森林減少や森林劣化が進行し、森林の保全と持続的利用が困難な状況にある。撹乱により劣化した森林の回復や持続可能な管理方策の提案のためには、森林劣化の状況を定量的に評価することが重要である。アンデス-アマゾンの山地林における森林劣化のレベルを地上部現存量と樹種組成の点から定量化するため、地上多点調査データを用いて、標高傾度にともなう地上部現存量と種組成の違いを評価した。調査対象地はペルー共和国のクスコ州にみられるアマゾン上部熱帯林域(Selva Alta)およびアンデス山岳林域(Sierra)であり、標高の範囲は約600~3700 mである。地上部現存量は13~362 Mg/haであり、標高が高くなるにつれて減少した。また、Cecropia(イラクサ科)やTrema(アサ科)など材密度が0.4 g/cm3未満の樹種を先駆種とし、それらの胸高断面積合計に基づく相対優占度を求め、地上部現存量との関係をしらべた。その結果、これらの先駆種は主に標高3000 m以下の場所に分布していた。そこで標高3000m以下に着目すると、先駆種の相対優占度と地上部現存量との間に有意な負の相関がみられた(r = −0.332, p = 0.019)。以上のことから、これらの先駆種の相対優占度は地上部現存量と組み合わせることで、標高3000 m以下のアンデス―アマゾン地域における森林劣化の指標となり得ることが示唆された。