| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-116 (Poster presentation)
生物種間に働く競争や繁殖干渉のような負の相互作用は、種間の排他的な分布をしばしば生じさせることが知られている。こうした負の相互作用は近縁な種群の間でより頻繁に生ずると古くから考えられており、Competition-Relatedness 仮説(CR仮説)と呼ばれている。CR仮説の検証にはいくつかの方法が提案されてきたが、その一つに野外で近縁種が同所的に生育しているのかどうかを調べるという方法がある。近縁な生物同士が共存しにくいことは、古くから経験的・実証的によく知られてきた一方、例えば熱帯林などでは数ha程の区画内に10種以上の同属種が共存するケースもあり、予想に反する事例も知られている。このため、CR仮説がどの程度一般的に成り立つのかについては研究者の間でも見解が分かれている。
この研究では、数百平方メートル程度のごく狭い範囲で近縁植物種同士が共存する現象がどの程度一般的に見られるのかを、植生調査の結果をもとに検討した。研究では九州の本土側387箇所(一つの調査区は約400平方メートル)で行われた調査結果をもとに、在不在データを整理した。その上で、区画内で同属近縁種がどの程度一緒に共存しているのか、同属近縁種同士はどの程度排他的に分布をしているのか、を調べた。
調査の結果、①木本種は草本種に比べて同一の調査区内に複数の同属種が共存することが頻繁にみられること ②草本種は木本種に比べて同属近縁種が排他的に分布する傾向が強いこと、が明らかになった。これらのことは、CR仮説は草本種では支持される可能性が高いが、木本種ではあまり支持されない可能性があることを示唆している。また、この背景には資源競争や繁殖干渉のような近縁種間で働く負の相互作用が木本種では何らかの形で緩和されている可能が考えられた。