| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-117  (Poster presentation)

気候変動が一年生作物の開花・結実へ及ぼす影響の評価
Assessment of the impact of climate change on flowering and fruiting of annual crops

*岡部憲和, 櫻井玄, 石塚直樹(農研機構)
*Norikazu OKABE, Gen SAKURAI, Naoki ISHITSUKA(NARO)

植物は気温の影響を受けやすく、将来における気候変動において、そのフェノロジーやバイオマスが影響を受ける可能性が大きい。フェノロジーと気温の関係についての研究は多くある一方で、気温とフェノロジーとバイオマスの関係について検証された研究はあまりない。バイオマスを作物の収量と読み替えた場合、収量と気温の関係についての研究は枚挙にいとまがない。それらの研究の中では、気温上昇によって作物の成熟が早くなり、その結果、受光する積算の日射量が減少し、バイオマスが低下し、収量が減少するというのが主なロジックである。しかしながら、気温の増加によって、開花日などのフェノロジーがどのように変化し、それがバイオマスにどのような影響を及ぼしたのかに関する研究は我々の知る限りほとんどない。本研究では、一年生植物のソバを材料として、気温と開花日、バイオマスの関係性を明らかにする。ソバは育種の歴史が浅く、野生種に近いものが各地で栽培されているが、他の作物と同様に毎年各市町村の収量が記録されている。さらに、開花などの情報が記録されている年もある作物である。
メッシュ農業気象データの情報をもとに、気温、降水量、生育期間の積算日射量などソバの収量の関係性を、一般化加法モデルを用いて解析した結果、積算の日射量は収量と負の相関を示し、むしろ、開花日が早いほど収量が増加するモデルが支持された。この結果は、従来の作物モデルにおける理論とは異なるものである。これは、開花期以降の気象環境が変化することが収量に影響していると考えられる。本研究では、開花日に関するモデルを作成し、将来において開花日の変化が収量に与える影響を解析する。


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