| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-118 (Poster presentation)
葉の傾斜角分布(leaf angle distribution, LAD)は生態系の葉量評価や系内の放射伝達、およびエネルギー・炭素交換過程に大きな影響を与える。個葉レベルでの葉傾斜角評価は以前から行われていたが、近年では高木で構成される森林生態系全体でのLAD評価をデジタル画像解析やドローンなどの遠隔技術法を用いて実施できるようになってきた。本発表では、多種が混在する西日本の混交森林を対象に、小型ドローンを用いて林分レベルでのLADを評価した。また、ドローンから得られたLAD情報と併せて林冠(キャノピー)デジタル画像の連続撮影から葉面積指数(実際には植物面積指数 Plant area index)の評価を行いその妥当性を検証した。2021年に行ったドローン調査の結果、ドローンに搭載されたカメラ画像から林冠を優占する主要種(ブナ、イヌシデ、モミ)それぞれのLADの特徴が明らかとなり、ブナ、イヌシデは類似のLADパターンを、モミはこれらとは異なる分布パターンを示した。これらの結果は既往の結果とよく一致し、適切に優占種のLADが抽出できたものと考えられる。さらに、これらを用いてキャノピーデジタル画像から推定されたPAIの年変化は、同時に実施されたリタートラップ計測やLAI-2000などによるPAIデータとよく一致した。一方で、植生の樹型が球体構造であるとの従来の仮定に基づいたLAD値を用いて算定されたPAIとは大きく異なった。このことから、ドローンを用いて直接計測されたLADは、PAIの評価を行う上で重要な林冠情報であることが示唆された。