| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-119 (Poster presentation)
環境省が実施している第6回・第7回自然環境保全基礎調査の植生調査結果をまとめた『全国植生調査データベース』(H12-30年版、収録地点数59,240地点)を利用することで、マダケ属およびホウライチク属に分類される種が確認された調査地点の分布を明らかにした。また、タケの出現した林分での最高階層優占種を明らかにし、タケの種毎の林内での位置づけの違いを検討した。この結果、モウソウチク、マダケ、ハチクの3種は九州から東北地方にかけて広く分布していたが、分布の北側にあたる北陸地方~東北地方にかけては、モウソウチクが内陸部や日本海側でも記載されていたのに対して、マダケとハチクは太平洋側に偏在していた。これは冬季の積雪が影響していることが示唆された。モウソウチクは、出現地点の59%で最高階層優占種となっており、優占林を形成しやすい特性を有していた。一方で、他のタケは最高階層優占種となる地点は3割程度であり、多くは樹木の林冠下で生育していたことから、モウソウチクとそれ以外のタケで違いが見られた。マダケ、ハチク、クロチクはケヤキなどの落葉広葉樹が優占する林分での出現が多かった一方で、九州南部や琉球諸島に分布をしているホテイチクとホウライチクは、出現林分の優占種も常緑広葉樹が多かった。こうした違いを踏まえて、竹林の種組成の検討やタケの生活史上のイベントが生態系にもたらす影響の解明が進むことが望まれる。