| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-120 (Poster presentation)
2010 年代から西日本各地で約 120 年ぶりのハチク(マダケ属)の開花が観察されている。開花ラメットは開花開始後に急速に落葉を生じさせ枯死に向かうものの,しばしば2〜3年にわたって連続開花する。また,残存する地下茎から矮小再生ラメットを発生させ,そこでも開花を生じさる。林分内(ラメット間)・林分間で開花開始時期に年単位のズレがあり,開花ラメット集団の枯死は開花後5年以上にわたることも珍しくない。Google Map上への開花地の記録や,Google Earth の空中写真の画像解析による開花竹林の抽出などから,タケ亜科植物としては世界最大・最長スケール(数百km・10年以上)の大規模広域開花と見なされる。
通常は栄養繁殖のみを行うタケ・ササ類において,開花は有性繁殖による更新の重要な機会と考えられてきた。しかし,今回のハチク開花では,十分な稔性をともなう結実や実生の発生が見られていない。同属のマダケでは,開花ラメットの枯死にとなう矮小再生ラメットによる更新の記録があるが,ハチクの開花地では樹木や草本(枯稈を宿主とするツル植物を含む)の顕著な侵入と優占度の拡大が先んじて生じている。また,一部の開花地では他のタケ類(マダケやモウソウチク)の侵入も観察されつつある。
ハチクの更新失敗による他植生への移行,または残存する矮小再生ラメットの持続や,非開花集団に由来する栄養繁殖による回復の可能性を注視していく必要がある。