| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-125  (Poster presentation)

関東・北陸地方における過去約40年間の植物群集気温の変化
Changes in plant community temperature during the past 40 years in Kanto and Hokuriku region

*小出大, 吉川徹朗, 石濱史子, 角谷拓(国立環境研究所)
*Dai KOIDE, Tetsuro YOSHIKAWA, Fumiko ISHIHAMA, Taku KADOYA(NIES)

近年の気候変動は、陸上植物種においてもその分布や生長量、フェノロジーに変化をもたらし、生態系やその機能・サービスの変質を引き起こしている。こうした気候変動影響に関する報告では、単一の種の個体群を対象にした観測がこれまで主流であったが、個体群レベルの解析では異なる種による相補的な機能の維持など種間関係の検出が難しいという課題がある。これらの課題を補い、生態系の機能や安定性に与える気候変動の影響を把握するためには、群集レベルの解析が欠かせない。そこで本研究では、国内における陸上植物群集の群集気温(構成種の分布における平均気温値を使った群集平均)の過去変化を明らかにすることによって、植生タイプや地域による植物群集の安定性・脆弱性の違いを把握することを目的とした。
時間的な群集組成の変化を把握するため、1970年代に特定植物群落に指定・調査がなされた関東・北陸地方における群落について、2018〜2020年に追跡調査を行った。具体的には、323群落、359プロットにおいて植生調査を実施した。さらに種ごとの気温分布域を全国の植生調査データとメッシュ気候値2010を用いて算出し、各プロットにおける群集気温を算出してその時間的変化を解析した。その結果、群集気温は全体に温暖化する傾向にあったが、森林群落に比べて草原群落の方が群集気温の上昇幅が大きかった。これは森林の高い種多様性による安定効果や草原における短い世代時間や撹乱の影響を示唆すると考えられた。また森林群落でも、高木層は群集気温が上昇している一方、草本層では群集気温が下降する現象が見られ、林冠発達による林床環境の冷暗化が示唆された。地理的には関東平野において群集気温の上昇が大きく、ヒートアイランドや人為撹乱の影響が考えられた。


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