| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-126  (Poster presentation)

大峯山における環境傾度に沿った植物種多様性
Vascular plant species richness along environmental gradients in Ohmine mountains, central Japan

*辻野亮(奈良教育大学)
*Riyou TSUJINO(Nara Univ. Edu.)

環境傾度に沿った維管束植物種の豊富さと構成を理解するために、奈良県南部に位置する大峯山脈の自然林において標高、地形、光条件の環境傾度に沿った種の豊富さと構成のパタンを調査した。285区画 (4×10 m) の調査区に出現したシダ植物、草本植物、木本植物のすべての種のリストを作成し、地形、傾斜角、林床光指数も記録した。標高760 m〜1,881 mの調査区で合計85科237種を確認した。木本種数と全植物種数は標高に沿って一山型のパタンを示した。これには、1) 中標高での好ましい穏やかな環境条件、および2) 高標高または山の頂上での好ましくない環境条件の2点が要因として考えられる。草本種数とシダ植物種数は単調な増加パタンを示した。これには、1) 低および中標高における森林では林床が暗く下層植生の草本とシダ植物の生存が妨げられていること、および2) ニホンジカ (Cervus nippon) の採食による影響の2点が要因として考えられる。クラスター分析により、標高によって特徴づけられた6つの植物群落グループが明らかになった。いくつかのグループは同じ標高帯に位置していたが、地形や林床の光環境に明らかな違いはないにもかかわらず、グループ間の種構成と種数は異なっていた。地球温暖化が進行すると山頂域の植生やシラビソ、および同所的に産する植物種は、正常に更新できず、分布標高を高めることができない可能性がある。これは、植物種などの地域絶滅が起こる可能性を示唆する


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