| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-127  (Poster presentation)

内陸植物の侵入が海浜植物群落の種組成と繁殖へもたらす影響
Impact of non-coastal plant invasion on species composition and reproduction of coastal plant communities

*綱本良啓, 島村崇志, 西川洋子(北海道立総合研究機構)
*Yoshihiro TSUNAMOTO, Takashi SHIMAMURA, Yoko NISHIKAWA(Hokkaido Research Organization)

国内の海浜植物群落の多くが既に消失または消失の危機に瀕している。石狩浜(北海道石狩市)は、大規模な海浜植物群落が存在する全国的にも稀少な自然海岸である。しかし、近年、内陸性植物の侵入による海浜植物群落の衰退が進行しており、早急に保全対策を立てる必要がある。そこで本研究では、表土の剥ぎ取りによる海浜植生の再生試験を実施し、植生の変化を調査した。また、最も優占する内陸性植物であるススキの侵入が海浜植物の有性繁殖にもたらす影響について調査した。10m×10mの試験区を合計24区画設定し、以下の処理を行った:表土約30㎝剥ぎ取り(6区画)、剥ぎ取った表土の盛土(6区画)、無処理(12区画)。各区画について、試験開始前および試験開始翌年に、植生調査を実施した。また、ハマヒルガオの結実率(n=179)とハマエンドウの結果率(n=106)、および各対象個体について周囲1m2のススキの植被率を調査し、一般化線形モデルによる解析を行った。植生調査では、維管束植物56種が確認された。無処理区の植被率は、平均60%だった。表土剥ぎ取り区では、植被率が、0.46%であり植被はほとんど回復していないが、海浜植物(コウボウシバ、コウボウムギ、ハマヒルガオなど)を中心に5614個体(14.6個体/m2)の植物の再生が確認された。今後のモニタリングが必要であるが、海浜植物群落の再生が期待できる。一方、表土盛土区では、全体の植被率が25%であり短期間で回復しつつあるが、海浜植物以外にも、内陸性植物(ススキなど)や外来植物(ナガハグサ、メマツヨイグサ、オニハマダイコンなど)が多く確認された。目標とする海浜植物群落とは異なる群落の再生が予想される。また、結実調査からは、ススキの植被率が高い場所では、花数あたりの果実や種子の成熟割合が有意に低下していることが明らかになった。このことは、内陸性植物の侵入により、海浜植物の植被率が減少するだけでなく、有性繁殖にも負の影響が表れていることを示唆している。


日本生態学会