| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-129 (Poster presentation)
生物多様性が脅かされている昨今、希少種の保全は社会に広く認知されるようになった。希少種の持続的な保全のためには地域の理解・協力が不可欠であるが、一方で希少種を守ることに特化し、周辺の生態系に対する配慮が不十分であるといった「問題」を含んでいる。こうした状況に鑑み、我々は保護区周辺の生息・生育地で共存する生態系構成種の情報を取得し、保全手法の更新することで、保全活動の価値を高める実践研究を行ってきた。
ハマエンドウ(滋賀県RDBの絶滅危惧種)とハマゴウ(同じく希少種)の生育する保護区①とハマゴウの生育する保護区②では、除草作業の手法と頻度が大きく異なる。保護区①では地域住民らが月に1度手作業で頻繁に作業をしているが、保護区②では年に1度人を募り、トラクターで大規模に行っている。除草作業は希少種の個体群の維持に寄与する反面、現時点で湖岸生態系への影響が不明である。そこで我々は季節ごとに保護区周辺の植生調査をした。その結果、両保護区ではイネ科・キク科・マメ科が優占し、保護区①では、秋から冬にかけて種多様性(α多様性)が大きく減少し、保護区②では変化が少ないことが明らかとなった。また、間接傾度分析の結果、除草作業は保護区の植生クラスターは変化しないことが判明した。しかし、除草の頻度の高い区域では、季節によって植生の均等性が有意に変化することが明らかとなった。さらに、両保護区は現在約4割が外来種であることから、過去の植物調査と本結果を比較したところ、外来種の割合はこの20年で大幅に増加したことが判明した。
本調査から、保護区の植生は除草作業(撹乱)に対してある程度頑強であることは分かったが、今後は近年増加した外来種が湖岸生態系へ与える影響を調査する必要がある。