| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-130 (Poster presentation)
我が国を代表する草原景観を有する阿蘇くじゅう国立公園「くじゅう地域」においても半自然草原植生の減少や変質が懸念されるが、その現状は明らかではない。本研究の目的は既報(大窪ほか 2021)のデータに追加調査を加え、半自然草原群落の組成と構造、種多様性と立地環境および植生管理条件との関係を解明し、群落の保全策を検討することとした。また、草原生態系の基盤となる群落の生物多様性や環境評価を簡易に行うための新規手法を開発するための基礎的データを収集することも本研究の目的である。
植生および立地環境調査は2地区(K・Y)において半自然草原および湿生草原、森林の計14地点を設定し、2020年8月から2021年10月に実施された。次に半自然草原の管理履歴や希少植物種の分布等に関する聞き取り調査は関係団体の代表者に対面方式で2019年から2021年に実施された。本地域では現在も野焼きや輪地切等の慣行的管理が実施されている地点があり、調査地に選抜した。
本調査で最も種多様性が高い群落型(4プロット)では28~43種(2m×2m)が出現した。本群落型では特にネザサの被度が極端に低く、ススキの優占度も他群落型よりも低かった。また、イネ科多年生草本では、トダシバの優占度が他群落型より高く、レンリソウやスズサイコ、ツクシボウフウなどの絶滅危惧種や希少チョウ類の食草であるツルフジバカマやカワラケツメイの出現が特徴的であり、サワヒヨドリやオカトラノオ、オミナエシ、アソノコギリソウ、クララなどの地域では一般的な多数の草原性草本植物から群落が構成された。本群落型ではハナウド等、湿性植物の出現も多く、土壌含水率が高いことも種多様性の要因と考えられた。出現種数が多かった要因としては、本群落型は刈取り頻度の高いシバ型の草地群落と接しており、適度なかく乱を受けていることが考えられた。本研究はJSPS科研費 JP19K06107の助成を受けたものである。