| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-132  (Poster presentation)

ニホンジカによる植生被害度の空間分布及び将来予測
Modeling distributions of foraging damages by sika deer and future projection

*比嘉基紀(高知大・理工)
*Motoki HIGA(Fac. Sci. Tec. Kochi Univ.)

 ニホンジカ(以下,シカ)の個体数増加・生息域の拡大に伴う自然植生への被害が広がっている。シカによる全国的な植生被害の実態を把握することを目的として2017~2019年に植生学会が実施したアンケート調査では,2009~2011年に太平洋側で顕著であった植生被害が内陸部や日本海側にも拡大したことを報告している。本研究では,この調査データをもとにシカの生息密度・履歴と植生被害度との関係を明らかにし,被害拡大予測を行った。2017~2019年のアンケート調査の植生被害度(5段階:なし,軽,中,強,激)を応答変数,生息密度・履歴を説明変数として,ベクトル型一般化加法多項ロジットモデルを構築した。説明変数として当該セルを含む周辺9セルにおける1978年・2014年時点のシカの分布セル数,2014年度のシカの推定生息密度が選択された。変数の重要性は,1978年のシカ分布セル数が最も高く,次いで2014年時点のシカ分布セル数,2014年の推定生息密度の順であった。植生被害が,直近のシカの生息密度ではなく,長期間採食に曝されていた地域で植生被害度が高いことは,多くの先行研究での知見と一致する。環境省のシカ分布アンケート調査をもとに,シカの分布拡大モデルを構築した。シカの分布拡大後の経過年数の進行とともに,植生被害度が強以上の地域が拡大することが明らかとなった。


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