| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-134 (Poster presentation)
種分化研究において島嶼環境は繁殖特性の進化要因と維持機構の解明に適した場所となっている。特に伊豆諸島は海洋島でありながら本土に近いという利点をもち,固有変種や固有種群での自殖性の進化研究がよく知られている。本土と明瞭な形態分化がみられない広域分布種においても,その侵入・定着過程で遺伝子流動の制約や訪花昆虫相の変化に直面してきた歴史を持ち,島嶼で送粉生態型分化を起こしている可能性がある。そこで本研究では夜間の訪花昆虫を利用する広域域分布種キキョウ科ツリガネニンジンを用いて本土と島嶼で訪花昆虫相利用に違いがみられるのか,これに対応した開花特性に分化が見られるのかを明らにすることを目的とした。調査地は伊豆諸島2集団(三宅島,伊豆大島)と伊豆半島2集団(細野高原,爪木崎)で,昼夜ビデオ撮影による訪花昆虫相解析,開花開始時間,蜜分泌パターンについて調査を行った。その結果,島嶼では既報と異なり昼の訪花昆虫を主として利用していた。本土側の伊豆半島内陸では夜間の訪花昆虫を主とし,昼間の訪花昆虫を繁殖保証として利用していた。ただし半島海岸の爪木崎集団では3年間の調査ともに夜間の訪花昆虫が観察できなかった。蜜分泌パターンについては本土2集団で明瞭に夕方から夜間にかけ蜜分泌を行っていた。これと異なり,島嶼集団では昼間から蜜分泌が始まっていた。開花開始時間には分化が見られなかった。これらのことから島嶼では夜間訪花昆虫利用から昼間訪花昆虫利用へのシフトが起こっており,それに対応した蜜分泌パターンの分化が見られることが明らかになった。