| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-135  (Poster presentation)

広域産地試験3試験地におけるアカマツ球果着生特性の地理的変異
Geographical cline in cone production in three test sites of Pinus densiflora provenance tests

*岩泉正和(森林総研林育セ九州), 栗田学(森林総研林育セ関西), 那須仁弥(森林総研林育セ東北), 木村恵(森林総研林育セ), 磯田圭哉(森林総研林育セ)
*Masakazu G. IWAIZUMI(FTBC Kyushu, FFPRI), Manabu KURITA(FTBC Kansai, FFPRI), Jin'ya NASU(FTBC Tohoku, FFPRI), Megumi K KIMURA(FTBC, FFPRI), Keiya ISODA(FTBC, FFPRI)

アカマツは本州・四国・九州に分布する日本の主要針葉樹の一つであるが、近年マツ材線虫病被害の拡大により天然資源が減少し、各地域で遺伝的多様性の喪失が危惧されている。地域集団の遺伝子保存のためには、人為的に現地外へ移動させて保存する生息域外保存が有効であるが、そのためには、移動先での成長・生存力の評価もさることながら、自立的な集団維持(更新)力に直結する繁殖特性(着花・結実量等)の応答性を評価することも不可欠である。林木育種センターでは全国各地の有名アカマツ天然林由来の共通実生家系を複数地域の環境下で育成する広域産地試験を進めており、これまでに苗畑での実生の発芽時期や伸長成長時期等の地理的クラインが認められている(岩泉ら 2018;2019;過去大会)。しかしながら、繁殖特性における体系的な環境応答性の知見は少ない。本研究では、アカマツ広域産地試験の3試験地で雌花や球果の着生状況を調査し、その家系間差や地理的傾向について解析した。
日立(茨城県)、智頭(鳥取県)、合志(熊本県)において2015年春に植栽したアカマツ広域産地試験地で、青森県から宮崎県までの全国10産地で各5母樹から採種した計50共通実生家系(基本、12個体/家系)を対象に調査を行った。2018年(4年次)~2020年(6年次)まで3ヶ年にわたり、個体毎に当年球果と雌花(翌年球果)の着生の有無を測定し、家系毎の着生開始齢や着生個体の割合について解析した。
その結果、年次の増加につれて当年球果・雌花の着生個体率はいずれの試験地でも増加していった一方で、両着生個体率は北の産地の家系ほど高い傾向が見られ、さらにその傾向は3試験地でほぼ共通した。このことから、北の産地の家系ほど若齢から着花・果するという地理的変異が認められたとともに、その変異には遺伝的(適応的)要因が関わっている可能性が考えられた。


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