| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-141 (Poster presentation)
雌雄同株の植物は、潜在的に他殖と自殖の両方を行い得る。理論的な予測では、完全な自殖か完全な他殖が進化するとされている。しかしながら実際の植物では、中間的な自殖率を示す種が非常に多い。なぜ、中間的な自殖率なのか? この問題は、古くから研究されているものの、未だ解決に至ってない。
本研究では、中間的な自殖率の進化要因に関する新仮説を提唱する。理論の要となるのが以下の三つである。
◇ 早期近交弱勢(受精から種子形成の間に発現)と後期近交弱勢(種子の発芽成長期以降に発現)がある。
◇ 早期近交弱勢の度合いに親個体間で変異がある。
◇ 胚珠の余剰生産をし、その度合いが進化する。
そして以下を示す。
◇ 余剰度の度合いも進化する(胚珠数と種子数が変化しうる)場合、中間的な自殖率は進化しない。
◇ 早期近交弱勢の度合いに親個体変異があるならば、胚珠の余剰度が進化する場合でも中間的な自殖率が進化する。
以上から、早期近交弱勢の度合いの親個体間変異および胚珠の余剰生産が中間的な自殖率を進化させうると結論する。