| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-145 (Poster presentation)
広葉樹の萌芽によるクローン再生の多くは定芽再生であり、攪乱による萌芽の発生量はその原器となる潜伏芽数に依存する。潜伏芽は腋芽が形成層で休眠したもので、木部の肥大成長と共に樹体内を移動し木材内にその移動痕跡(bud trace)を残す。このため、潜伏芽の経時的な発達・蓄積・喪失過程は、樹体内のbud traceを追跡し、その消長を年輪と合わせて解析することで明らかに出来、それを萌芽能力の推移の指標とすることが出来る。
本研究では、ブナ科落葉高木(コナラ・ミズナラ・ブナ)について1個体あたり14000枚〜20000枚の高解像度切片画像をコンピューター内で3D合成することでbud traceの三次元画像を生成し、これを年輪データと合わせて解析することで個体内の地際〜高さ140cmの潜伏芽の消長パターンを明らかにした。
ブナとコナラ属二種の間では、潜伏芽の蓄積数・蓄積位置、伐採試験後の萌芽反応共に大きな差があったが、いずれも潜伏芽数と萌芽発生数には有為な正の相関がみられた。bud trace数は、幹年齢5〜10歳まで急激に増加したあと、時間経過と共に減少した。このカーブの違いが、萌芽の種特性の違いに強く影響すると考えられた。