| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-154 (Poster presentation)
温帯地域において、気温の季節変化は森林樹木の生産性に大きな影響を与える。とくに開芽時期は個体の生産性に直結するため、非常に重要であると考えられている。一般に、温帯樹木の開芽時期は冬の気温(低温刺激)、春の気温(有効積算温度)と日長の影響を受けており、それぞれの影響の大きさは種によって異なると考えられている。地球温暖化によって樹木の開芽時期が変化しているが、このような温暖化への応答は種によって異なる可能性がある。このため、森林樹木の短期的な温暖化応答を予測するためには、開芽時期の温暖化応答の種間差について一般的な傾向を明らかにすることが必要である。本研究では、京都府長岡京市西山キャンプ場周辺、兵庫県西宮市六甲甲山、大阪府貝塚市の大阪府立少年自然の家の3ヶ所の暖温帯二次林に生育する常緑広葉樹と落葉広葉樹の展葉フェノロジーを5-6年間にわたって調査した。これらの結果をもとに、常緑樹と落葉樹の開芽時期の年変動と葉の形質との関連を比較し、開芽時期の予測可能性を評価した。
この結果、開芽時期は落葉樹では3月下旬〜4月上旬、常緑樹では3月下旬〜5月中旬であり、平均的には常緑樹のほうが開芽が遅い傾向が見られた。開芽時期は年によって15日程度差があり、2018に早く、2017年に遅かった。調査地を変量効果として葉面積、葉重/葉面積比(LMA)、1月、2月、3月の気温と開芽時期の関係を調べたところ、落葉樹では葉面積とLMAと3月の気温の効果を説明変数としたモデルが選択され、葉面積やLMAが大きい種、3月の気温の高い年に開芽時期が早かったのに対し、常緑樹では明瞭な結果が得られなかった。以上から、複数の森林について年変動を考慮した上で、落葉樹では葉形質と気温によって開芽時期が予測できる可能性があるが、常緑樹では単純な予測が難しいことが示唆された。