| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-155  (Poster presentation)

降水量が異なる地域に成立した亜熱帯樹木群集における生理生態学的特性の比較
Comparisons of ecophysiological traits between subtropical tree communities under different precipitation

*河合清定(国際農研), 田中憲蔵(国際農研), 石田厚(京都大学)
*Kiyosada KAWAI(JIRCAS), Tanaka KENZO(JIRCAS), Atsushi ISHIDA(Kyoto Univ.)

熱帯・亜熱帯域では今後の乾燥化により森林の構造と機能が不可逆的に劣化する可能性が高まっている。一方、乾燥化により樹木群集の組成がどのように変化し、機能的な違いが生じるかについてはよくわかっていない。この問いに答えるためには、降水量が異なる地域に成立した樹木群集間の機能的な特性(生理生態学的特性)を比較し、その要因を分析することが有効である。群集間の特性の違いは、種の違いと種内変異によって引き起こされる。群集間の特性の違いが種の違いによって主に引き起こされている場合、乾燥化により種組成が大きく変化する可能性がある。このように、種の違いと種内変異の効果を定量的に分析することは、気候変動の影響予測に役立つと期待される。しかし、生理生態学的特性の種内または同属内の変異については、とりわけ熱帯域において不明な点が多い。

本研究では、生物多様性が高く気候変動に脆弱な系とされる亜熱帯島嶼部に着目し、気温は同程度だが夏季降水量が大きく異なる小笠原諸島父島と琉球諸島石垣島に成立した樹木群集を対象とした。そして、父島では24種(一部特性については42種)、石垣島では31種を対象に、葉の最大気孔コンダクタンス、飽水時の葉浸透ポテンシャル、葉面積、材密度といった生理生態学的特性のデータを取得した。両群集での共通種は11種、共通属は21属だった。本発表では、これらの特性についての群集間変異、およびそれを駆動する種の違いおよび種内・同属内変異の効果、生活型(常緑・落葉/高木・低木)による応答の違いについて議論する予定である。


日本生態学会