| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-167  (Poster presentation)

落葉果樹が前年の秋に同化した13Cの新生器官への利用:成木を対象としたトレーサ実験
Use of photoassimilated 13C in the autumn on the new aboveground growth of a mature apple tree in the next growing season

*今田省吾((公財)環境研), 守谷友紀(農研機構), 多胡靖宏((公財)環境研)
*Shogo IMADA(IES), Yuki MORIYA(NARO), Yasuhiro TAKO(IES)

 落葉樹は、生育期間中に光合成同化炭素の一部を樹体内に貯蔵し、翌春の新生器官の初期成長等に利用する。これまでの調査で、落葉果樹(リンゴ)のポット樹を対象とした13Cトレーサ実験により、同化時期によって翌春の葉、当年枝及び花中の残存13C濃度が変化すること、各器官中の残存13C濃度が成長に伴って指数関数的に減少することなどが示された。しかし、これらの結果は現存量の小さいポット樹を用いて得られたものであって、現存量が大きくなると翌春の貯蔵炭素利用がポット樹とどのように異なるかなど、成木の貯蔵炭素利用については未解明の部分が残されている。本研究では、果樹園で栽培管理された成木を対象とした13Cトレーサ実験を行い、翌年の生育期間中の地上部新生器官中の残存13C濃度の経時変化を明らかにすることを目的とした。
 リンゴ成木への13CO2ばく露は、2020年10月に農研機構果樹茶業研究部門リンゴ研究領域圃場のリンゴ園の成木(16年生、品種:ふじ、台木:JM1)地上部全体を対象として、成木専用に作製したばく露チャンバーシステムを用いて実施した。本実験におけるばく露時の13CO2濃度及びばく露時間は、それぞれ約40 atom%及び6時間である。13C標識樹は越冬させ、その翌年の展葉期から収穫期まで生育段階に合わせて着果枝を採取し、葉、当年枝及び花(又は果実)に分別して、乾燥粉砕試料中の13C濃度を測定した。
 標識翌年における葉、当年枝及び花中残存13C濃度は展葉期に最大値を示し、その後器官の生育に伴い指数関数的に減少する傾向がみられた。花中残存13C濃度は6月上旬(満開後29日)まで急減し、7月上旬(満開後60日)にほぼ自然レベルの濃度となった。この残存13C濃度の減少傾向は、現存量の小さいポット樹と大きく異ならなかった。
 本記載事項の一部は、青森県からの受託事業により得られた成果である。


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