| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-175  (Poster presentation)

タイ乾燥フタバガキ林における火災にともなう樹木の水・炭素利用の変化
Physiological changes on trees after the exposure of fire in a Dry Dipterocarp Forest in Thailand

*吉村謙一(山形大学), 石田厚(京都大学), 前田高尚(産総研), Samreong PANUTHAI(DNP), Phanumard LADPALA(DNP), Surachit WAENGSOTHORN(TISTR), 安立美奈子(東邦大学)
*Kenichi YOSHIMURA(Yamagata Univ.), Atsushi ISHIDA(Kyoto Univ.), Takahisa MAEDA(AIST), Samreong PANUTHAI(DNP), Phanumard LADPALA(DNP), Surachit WAENGSOTHORN(TISTR), Minaco ADACHI(Toho Univ.)

タイ東部にはフタバガキ科の樹木が優占する乾燥落葉広葉樹林(DDF;Dry Deciduous ForestもしくはDry Dipterocarp Forest)がみられる。この森林は土壌が薄く乾燥した土壌に成立しており、樹高が低く林冠が連続しておらず、Shorea siamensisや Shorea obutusaなどの落葉樹が点在して生育する。乾季になると土壌乾燥にともない落葉がみられ、乾季の後期になると展葉がみられ、水分の動態が樹木の生理特性の季節変化に影響すると考えられる。また、乾季に森林火災が起こることがあり、森林火災は樹木の生理特性の季節変化に影響を与えると考えられる。そこで本研究では雨季・乾季の季節性と火災が樹木の生理特性にそれぞれどのような影響を与えるかについて明らかにすることを目的とした。
調査地はタイ東北部に位置するサケラート環境研究ステーションでおこなった。当試験地では毎年のように森林火災がおこっている上に2018年および2019年に人工火入れ実験をおこなっており、様々なタイミングで起こった火災の影響をみることができる。調査地内に林冠観察用観測塔を4本設置し、樹液流速を計測した。また、年4回現地で光合成速度、枝の通水性、水ポテンシャルの測定をおこなった。枝を採取し、枝の呼吸速度測定や切片観察をおこなった。
水ポテンシャルはどの樹木も雨季に高くなり、乾季に低くなった。ところが木部のエンボリズムや光合成速度は経験した火災のタイミングによって異なることが分かった。火災と乾燥はともに展葉時期に影響を与え、それが樹冠部の通水阻害や生産性に影響を与えることが示唆された。


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