| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-176  (Poster presentation)

塩ストレスがヒルギ科マングローブ二種の菌根共生と養分吸収に及ぼす影響
The impact of salinity on mycorrhizal colonization and nutrient uptake of two Rhizophoraceae mangroves

*赤路康朗(国立環境研究所), 井上智美(国立環境研究所), 高津文人(国立環境研究所), 谷口武士(鳥取大学)
*Yasuaki AKAJI(NIES), Tomomi INOUE(NIES), Ayato KOHZU(NIES), Takeshi TANIGUCHI(Tottori Univ.)

熱帯・亜熱帯域の汽水域に生育するマングローブ植物はしばしば帯状分布を形成する.我が国においても,海側にヤエヤマヒルギが,陸側にオヒルギが優占する傾向がみられる.したがって,塩ストレスに対するヤエヤマヒルギとオヒルギの応答は異なることが予想される.本研究では,この2種を対象として,塩ストレスが成長,菌根菌感染率,および葉の養分濃度に及ぼす影響を検証した.西表島のマングローブ林から胎生種子と土壌を採取し,温室内で植栽後,対象区(純水に毎日6時間冠水)とNaCl区(0.2M NaCl溶液に毎日6時間冠水)に各種7個体ずつ約140日間生育させた.統計的有意差はなかったが,対象区のオヒルギはNaCl区に比べて個体乾燥重量が高かったのに対し,ヤエヤマヒルギでは処理区間でほぼ同程度だった.両樹種ともに,葉の乾燥重量は対象区で有意に高かった.オヒルギでは対象区で根の乾燥重量が有意に高く地上部/地下部比が低かったのに対し,ヤエヤマヒルギではNaCl区で地上部/地下部比が低かった.このことから,オヒルギは対象区で,ヤエヤマヒルギはNaCl区で地下部への資源分配が多くなることが示唆された.さらに,オヒルギにおけるアーバスキュラー菌根菌感染率は対象区で有意に高かったことから,オヒルギは塩ストレスによって養水分吸収能力が著しく低下することが示唆された.一方で,ヤエヤマヒルギは処理に関わらず全ての個体で菌根形成がみられなかった.葉のナトリウム濃度は両樹種共にNaCl区で有意に高かったが,必須多量元素であるカリウム,カルシウム,およびマグネシウムの濃度は両樹種共に対象区で有意に高かった.有意差はなかったが,オヒルギではNaCl区で葉の窒素とリン濃度が高く炭素/窒素比と炭素/リン比が低い傾向がみられたことから,塩ストレスによる成長抑制によって窒素とリンが相対的に余剰状態にあることが考えられた.


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