| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-177  (Poster presentation)

植物の葉経済スペクトルと病原菌防御の関係
Relationship between Leaf Economic Spectrum & pathogen defense in plants

*渡部慧介, 上妻馨梨, 彦坂幸毅(東北大学)
*Keisuke WATANABE, Kaori KOHZUMA, Kouki HIKOSAKA(Tohoku university)

種間で比較すると、光合成能力や窒素濃度が低い種は、LMA(葉重/葉面積)が高く、葉寿命が長いといった収斂が見られ、これは葉経済スペクトルと呼ばれる。葉寿命が長い種は、光合成能力を犠牲にしてLMAを高くし、長寿命を実現していると考えられているが、LMAを高くすることで得られる利益が何なのかは必ずしも明らかになっていない。例えば、昆虫による被食率とLMAの間に相関が見られないこともある。本研究では菌類による病気感染に着目し、比較的感染種特異性が低いことがしられている菌核菌(Sclerotinia sclerotiorum)を感染させ、LMAが高いことの利益を定量化することを目指した。さらに、葉の切断面への感染試験も行い、表皮の役割を明らかにすることを目指した。
 仙台市青葉山に自生する一年草3種、多年草3種、落葉樹9種、常緑種8種を対象に葉をサンプリングし、葉ディスクを打ち抜いた。菌核菌をゲル内で育成し、ディスク表面中央にゲルを置く処理と、葉の切断面にゲルを接触させる処理を行った。感染度合は葉の病変面積から求めた。また、別の葉を用いてLMAと葉の最大貫通力を測定し、後者を葉の強度の指標とした。
 葉ディスク表面にゲルを置いた場合では、樹木よりも草本の方が感染度合が高く、LMA及び葉強度と葉の感染度合との間に負の相関が見られた。また、切断面にゲルを接触させた場合でも樹木よりも草本の方が感染度合は高かったが、LMA及び葉強度と感染度合との間に相関はなかった。このことから、LMAを高くすることは表皮の強度を上げることを通して感染防御に効果があることが明らかとなった。また、切断面の感染度合いには種間差が見られ、LMAや葉の強度以外の要因に依存することが示唆される。この原因究明を今後の課題とする。


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