| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-181  (Poster presentation)

イノシシ生息域における竹林の分布拡大と新稈数および枯死稈数
TThe expansion of bamboo forest and the numbers of current-year bamboo shoots and dead culms in bamboo forests affected by wild boars

*藤原道郎(兵庫県立大,淡路景観)
*Michiro FUJIHARA(Univ. of Hyogo, Awaji L.P.H.A.)

放棄竹林の拡大により植生をはじめ様々な影響が生じており,その拡大防止が求められている.一方,イノシシ生息域においては林内においてはイノシシによるタケノコの掘り起しなども見られ,イノシシが竹林の再生に与える影響は極めて大きいことも報告されている(小田巻ほか2021).イノシシの影響のある林分とない林分とでは竹林拡大にも違いがある可能性がある.そこで,イノシシの生息域における竹林の新稈数,枯死稈数,およびイノシシのタケノコ食害の状況を明らかにすることを目的とし,モニタリング調査を行った.
 調査対象地は兵庫県淡路島北部に位置する県立淡路島公園内の北東向きの傾斜約20°のモウソウチク林とした.2004年度~2010年度に設置した10m×10mの方形区6個において,設置時に稈数約50%となる間伐を行い,稈の位置,新稈,枯死稈の記録を行った.また,イノシシの影響を明らかにするために,イノシシに掘り返され食べられ食痕が残るタケノコのシュートをカウントし,根本径をカーボンノギスで計測するとともに位置を記載した.カウントしたタケノコの食べ残しや皮は持ち帰り,実験室で生重,乾燥重量を計測した.
2016年12月から2021年12月までの5年間の新稈数は8±5.2本/100m2(平均±SD)で,1年間あたり平均で1.6本/100m2,最大2.8本/100m2,最少0.4本/100m2であった.一方,5年間の枯死稈数は11±5.9本/100m2(平均±SD)で,1年間あたり平均で2.2本/100m2,最大4.0本/100m2,最少0.6本/100m2であった.新稈数は枯死稈の0.67倍と枯死稈数を下回っており,竹稈数の減少が続いていた.イノシシによるタケノコ摂食は10月末ないしは11月から始まり5月末まで続いていた.2020年10月から2021年6月のタケノコ被食数は約33個/100m2に達した.竹林の分布拡大にも影響を及ぼしていると考えられた.


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