| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-197 (Poster presentation)
コナラは幅広い土壌養分傾度(特にリン)に出現し、土壌リン可給性が低くても優占してコナラ林を形成する。東~西日本にかけた幅広いコナラ林の形成には、コナラのリン獲得能力における適応や順化が関わっていると考えられる。樹木は細根から土壌有機態リンを加水分解するホスファターゼという酵素を分泌し、リンを獲得する。酵素はタンパク質であるため、ホスファターゼの分泌にはリン獲得のベネフィットだけでなく、窒素投資のコストが関係するはずである。さらに、土壌中の基質量や細根に共生する菌類も影響を与えると考えられる。そこで、本研究は土壌リン可給性が異なる8つのコナラ林で調査を行い、コナラにおける細根ホスファターゼ活性と樹木のN-P要求性や基質量、菌類との関係を明らかにすることを目的とした。
調査は2021年8~9月に行い、コナラの細根と生葉を採取した。4種類の細根ホスファターゼ活性(APM:ホスホモノエステラーゼ、APD:ホスホジエステラーゼ、PyP:ピロホスファターゼ、PhT:フィターゼ)を測定した。生葉はN,P濃度を測定し、N/P比を求めた。土壌基質量については0.25M NaOH + 0.05M EDTAで抽出を行い、31P-NMRによる分析を行った。また、細根の真菌DNA Amplicon解析を行った。
細根ホスファターゼ活性ではAPD、PyP、PhTにおいてサイト間で有意差が見られた。また、それぞれの活性を目的変数、真菌DNAリード数(門レベル)、樹木のN-P要求性、基質量、土壌栄養塩可給性(N,P)を説明変数として重回帰分析を行った。PyPで生葉のN/P比、基質量(ピロリン酸)が有意な説明変数として選択された。コナラの細根ホスファターゼ活性には種内変異がみられ、これはコナラが土壌中の基質量やNP資源量の変化に応じて、菌類との共生関係を変化させながら適応や順化をした結果であると考えられる。