| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-199  (Poster presentation)

日本列島の森林生態系における土壌リン可給性の決定要因
Factors determining soil phosphorus availability in forest ecosystems of the Japanese archipelago

*佐々木真優(京大・農・森林生態), 向井真那(山梨大・生命環境), 北山兼弘(京大・農・森林生態)
*Mayu SASAKI(Kyoto Univ. Forest Ecology), Mana MUKAI(Univ. of Yamanashi), Kanehiro KITAYAMA(Kyoto Univ. Forest Ecology)

日本は世界有数の火山国であり、火山灰土壌に広く覆われる。日本の森林生態系の多くが褐色森林土などの非火山灰土壌に成立しているが、これらの土壌も実際には降下火山灰の影響を強く受けているとされる。火山灰に由来する二次鉱物の非晶質物質には活性Al・Feが多く含まれ、これらはリン(P)を強く吸着する性質を持つことから、火山灰土壌ではP不足が引き起こされるとされてきた。一方で、火山灰をはじめとした火山噴出物はPの供給源ともなる。日本では、火山灰土壌のP不足を指摘する研究はあるものの、森林土壌のP可給性と火山灰に関する研究はない。そこで、本研究は主に火山灰加入に着目し、日本列島の森林生態系において土壌Pの可給性を決定する要因を明らかにすることを目的とした。
 土壌は、北海道から鹿児島県まで、全国の環境省モニタリングサイト1000を中心に、20か所の自然林で採取した(0-5 cm, 5-15 cm, 15-30 cmの3層)。Hedley抽出法により、各土壌試料から可給性の異なる無機態Pと有機態Pを連続的に抽出し、濃度を決定した。さらに、火山灰加入の指標として酸性シュウ酸塩溶液抽出のAl・Fe(非晶質物質)濃度と、全炭素濃度も決定した。
 非晶質物質濃度は大きなサイト間差を示した。土壌全P濃度も、128から1584 µg/gまで幅広い変異を示し、サイト間で有意に異なった。全P濃度は非晶質物質濃度が増加するにつれて飽和型の増加パターンを示した。可給性の高い無機態Pやその他の複数のP画分でも同じような傾向が示された。これらの結果は、火山灰中の一次鉱物がリンのソースとして働いており、全P濃度と可給態の無機態Pは火山灰の加入量に応じて高まり、やがて頭打ちになることを示す。これらの結果から、火山灰加入が多い日本の森林生態系では、火山灰がリンの供給源として作用し、リンの可給性を支配していることが示唆された。


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