| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-200 (Poster presentation)
森林土壌の化学性に対する地質および大気降下物の影響を解明するために、Sr同位体比を用いた解析を行った。対象は日本の42ヶ所の森林で採取されたリター層(Oa層)および表層土壌(0-10 cm)である。リター層は過酸化水素で湿式灰化、土壌は1 M酢酸アンモニウム溶液で交換性塩基を抽出し、可給態のSr同位体比(87Sr/86Sr)をマルチコレクターICP-MSで分析した。
Sr同位体比の地点間変動がどのような要因の影響を受けているかを把握するため、環境パラメータ(年間降水量、年間平均気温、緯度、30年間の窒素沈着量(Morino et al., 2011, J. Geophys. Res.)、冬季降水割合、植生、地質、土壌型)を用いてPLSパスモデリングによる解析を行った。その結果、窒素沈着量と冬季降水割合を合成した潜在変数である大気沈着と地質の影響が有意だった。次に、土壌の生物化学的性質の地点間変動にどのような要因が関わっているかを明らかにするために、既存のパスモデル(Urakawa et al., 2016, For. Ecol. Manag.)にSr同位体比を組み入れた解析を行った。その結果、リターと土壌のSr同位体比は土壌の酸性度および塩基濃度と有意な関係がみられたものの、土壌微生物が担う窒素形態変化への間接影響は有意ではなかった。以上を総合して、地質と越境大気汚染の影響を示唆する大気沈着が、Sr同位体比を介して土壌の酸性度や塩基濃度に影響を及ぼしていることが明らかになった。