| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-204  (Poster presentation)

ダム直下に生息する河川動物の餌資源内容とCs-137濃度の季節変化
Seasonal changes in food items and Cs-137 concentrations in animals inhabited in a stream channel below a reservoir dam

*境優(国環研), 石井弓美子(国環研), Jaeick JO(NIES), 辻英樹(国環研), 田中あすか(国環研), 武内優真(早稲田大), 平塚基志(早稲田大), 林誠二(国環研)
*Masaru SAKAI(NIES), Yumiko ISHII(NIES), Jaeick JO(NIES), Hideki TSUJI(NIES), Asuka TANAKA(NIES), Yuma TAKEUCHI(Waseda Univ.), Motoshi HIRATSUKA(Waseda Univ.), Seiji HAYASHI(NIES)

ダム湖では汚染土砂を捕捉する一方、流入河川や湖底堆積物等からの溶存態Cs-137の供給により夏期にその濃度が極大となる。溶存態Cs-137は最も生物利用性が高い存在形態であり、その濃度の季節変化は食物網を通してダム下河川に生息する水生動物のCs-137濃度にも影響すると考えられる。しかし、動物のCs-137濃度は、摂食に伴う取込だけでなく代謝に伴う排出とのバランスにより決定されるため、取込・代謝を考慮した評価が必要である。本研究ではダム直下河川の肉食性動物2種を対象に、それらのCs-137濃度と餌資源内容を季節的に把握することでCs-137の取込・代謝を通して種間でCs-137濃度の季節変化に差異が生じるかを検証した。
 太田川(南相馬市)の横川ダム直下で食物網の基盤餌資源とスジエビ・ヨシノボリ類を2020年8月~2021年10月の隔月で採集し、全試料のδ13C・δ15Nと2種(筋肉部)のCs-137濃度を測定した。その結果、2種の餌資源内容は季節を通して著しく重複していたが、Cs-137濃度のピークはスジエビで10月、ヨシノボリ類で2月と異なっていた。また、スジエビでヨシノボリ類よりCs-137濃度が有意に高く、Cs-137排出量はヨシノボリ類>スジエビであると推察された。一般に水生生物の代謝量は夏期に高く冬期に低くなるため、溶存態Cs-137濃度と同様の季節変化を示す。そのバランスについて、理論的には取込>排出のとき河川動物のCs-137濃度は夏期に、取込<排出のとき河川動物のCs-137濃度は冬期にピークを示す。以上から、餌資源内容が重複する動物であっても代謝量に応じてCs-137濃度のピークにずれが生じると推察された。また、スジエビと溶存態のCs-137濃度に生じたピークのずれは、河川水から高次消費者へのCs-137移行にかかるタイムラグに由来するものと考えられた。


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