| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-208 (Poster presentation)
火山灰土壌は主成分の非晶質鉱物がリンを吸着するために、火山灰土壌の樹木は有機酸を細根から滲出させて非晶質物質を溶解し、リンを獲得している可能性がある。そこで本研究では、日本の二次林に広く分布するコナラ林を用いて樹種を統一させて樹木のリン獲得戦略を明らかにすることを目的とした。目的を達成するため、根圏での土壌理化学性の変化に着目した。発表者らの先行研究から、表層土壌の全リン濃度と非晶質物質濃度は非火山灰土壌に比べて火山灰土壌で高い。
非火山灰土壌および火山灰土壌に成立するコナラ林を4調査地ずつ、合計8調査地選んだ。各調査地で2019年7-9月に表層5cmの非根圏土壌と根圏土壌を採取した。採取した土壌のリン画分、微生物バイオマスC,N,P濃度、ホスファターゼ活性を求めた。また2021年7-9月にコナラの三次根までの細根滲出物を野外で獲得し、有機酸の分泌速度を求めた。非火山灰土壌では有機態リンが根圏で増加している一方で、非晶質鉱物に吸着しているリンは根圏で減少していた。一方、火山灰土壌では植物が利用可能な無機態リンが根圏で減少していた。ホスファターゼ活性や微生物バイオマスC,N,P濃度は、どちらの土壌でも根圏で高かった。細根有機酸分泌速度は非火山灰土壌で大きかった。
以上の結果から、同じ樹種(コナラ)で比較した際、火山灰土壌と非火山灰土壌でリン獲得様式は異なることが示唆された。全リン濃度の低い非火山灰土壌では樹木は有機酸分泌を積極的に行い、根圏の微生物活性やリン酸分解酵素の活性を高めて無機化されたリンを獲得し、さらにわずかに含まれる非晶質鉱物に吸着したリンも有機酸により直接獲得している可能性が示された。一方、全リン濃度の高い火山灰土壌では、非晶質鉱物に吸着したリンを積極的に利用しているわけではなく、利用しやすい形態のリンから優先的に利用している可能性が示された。