| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-212 (Poster presentation)
草原生態系の主要な土地利用である放牧は、植物群集に変化をもたらす重要な要因である。放牧による植物群集への影響を検証した研究が多く行われている一方で、放牧による植物・節足動物群集への影響およびその相互関係を同時に検証した研究は少ない。放牧による植物群集の変化は、栄養カスケードを通じて、他の栄養段階に影響を及ぼすことが予測できるため、より深い理解が必要である。
異なる放牧圧を隔てた柵内外の隣接した環境を比較する柵内外比較(Fence-line contrast)は長期的な放牧による植物群集への影響の評価によく用いられてきた。長期的に設置された禁牧柵内外での、植物・節足動物群集の柵内外比較は、長期的な放牧による植物・節足動物群集への影響やその相互関係を検証するのに最適であろう。
本研究では、2004年から現在に至るまで禁牧柵を設置することで長期的に放牧を排除しているモンゴル国Bayan-Unjuul村で、放牧による植物・節足動物群集への影響を検証した。柵内外の比較では、植物群集は種の多様性・機能的多様性・機能的組成、節足動物群集は全個体数・分類群(目)・食性ギルドごとの個体数を用いた。
検証した結果、植物群集は、柵内(禁牧条件下)では植生高および葉面積が高くなり、柵外(放牧条件下)では葉の乾重率が高くなることが分かった。放牧による節足動物群集への影響および植物と節足動物間の相互関係は、分類群および食性ギルド毎に異なることが分かった。
本研究で得られた知見は、植物群集だけでなく節足動物群集への放牧影響を、柵内外比較を用いて評価したことで、柵内外比較を用いたこれまでの知見を補完・補強した。