| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-215  (Poster presentation)

青森県における水生植物相とその変化
Aquatic macrophyte flora in Aomori Pref.

*山岸洋貴(弘前大学), 首藤光太郎(北海道大学), 山ノ内崇志(福島大学), 加藤将(新潟大学), 志賀隆(新潟大学)
*Hiroki YAMAGISHI(Hirosaki Univ.), Kotarou SHUTOH(Hokkaido Univ.), Takashi YAMANOUCHI(Fukushima Univ.), Syou KATO(Nigata Univ.), Takashi SHIGA(Nigata Univ.)

陸水域における生物多様性の減少と生態系の変質は著しく,これらの進行速度を少しでも緩和すべく具体的な対策を講じることが喫緊の課題である.特に生物多様性は,地域単位で失われていくことから,現状の把握と将来予測,また対象とする地域の特性を考慮した対策を考察しなければならない.青森県には多様な陸水環境が存在し,豊かな生態系が存在していたが,大規模な開発,陸水域の利用形態や構造の変化,外来種の侵入など様々な要因によって,陸水域の劣化が進行し,生物多様性が減少しているものと推測される.しかし,地域における生物の分布情報は,近年,非常に限定的となっており,現状の把握が難しい状況である.青森県では,市民の自然史研究を支える社会的基盤や人材が急激に減少しており,調査活動自体や情報の集約,提供体制が弱体化している.地域の陸水域と生物多様性を維持していく為には,まずは市民との協働体制を構築することが不可欠であり,その基礎づくりが重要である.
そこで本研究では,これまで青森県内で得られた水生植物の分布データを文献および標本などから可能な限り収集し整理することで,県内の水生植物の分布状況の把握とその変遷を明らかにし,その情報を広く公開することを目的とした.青森県に分布する水生植物について整理する為に利用した文献類は学術論文や市町村史などを中心に126編,標本は21機関に収蔵されている計2770枚とした.情報を整理すると,1907年から2021年に青森県内で採集および記載された水生植物は35科193分類群(雑種も含む)であった.さらに採集および記録地点別,年代別に情報を整理した結果,調査地域や年代の偏りがあること,少なくとも近年までは減少傾向だった種などが明らかになった.検討すべき点はいくつかあるが,得られた情報から優先的に調査を行う必要がある地域や種を検討する基礎的な情報を提供することが可能となった.


日本生態学会