| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-217 (Poster presentation)
人口減少時代に突入し、省力化の視点や、生物多様性を活用した持続的な畦畔管理技術の開発が望まれている。水田や畦畔をはじめ、農業景観周辺に存在する草地については、適切に管理されれば生物多様性が高く維持されることが知られている。また、刈払い頻度などの管理法の違いにより生物多様性が変動することも明らかになりつつある。近年の研究では、適切な刈払い管理は、生物多様性維持の視点だけではなく、斑点米カメムシの生息地として機能するイネ科雑草の抑制効果もあることが示されつつある。(楠本2018)。
本発表では、植生管理と害虫管理の視点から、双方の分野の調査・解析を統合し、省力化を狙いながら生物多様性を保全、活用した畦畔管理のありかたについて考える。研究対象地において、刈払い頻度や時期、刈払い方法について考慮した野外操作試験区を複数設置し、コドラート法による植生調査ならびに、スィーピング調査による主要天敵・害虫の調査を実施し、各生物群の変動を解析した。適切な時期に刈払いを実施した畦畔は生物多様性が向上しながら、イネ科草本の植被率が抑えられていた。また、有機差は確認できなかったが、斑点米カメムシの発生量も少ない傾向が見られたとともに、景観構造との関係性も示された。
これらの結果は、化学合成農薬が使用できない、または限られる有機農業や環境保全型農業における畦畔管理にも活用できるとともに、2021年に策定された「みどりの食料システム戦略」にも寄与できると期待される。