| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-222 (Poster presentation)
国内外において湿地面積の減少により、水生植物の生育環境は全国的に減少しつつある。
国内の河川域については、ワンドやたまりといった止水域の水生植物の生育環境は明らかになりつつあるが、流水域については不明な点が多い。特に河川の流水域に生育する水生植物は河川の低水路の掘削等による影響を受けやすいとされ、生育環境の基礎データが必要である。そのため本研究においては、河川の流水環境における水生植物の生育場の環境要因を明らかにすることを目的とした。
調査は2021年10月に茨城県筑西市の小貝川水系大谷川で行った。縦断方向に20m程度の調査区を4つ設定した。下流方向から2mごとに河川横断方向に区切り、右岸際、右岸、中央、左岸、左岸際と5つの調査点を設けた。調査地点の合計は186地点だった。各調査点で出現した水生植物種および環境要因として流速、水深、河床材料の有無(泥、砂、礫、石)の在不在を記録した。
水生植物は合計で4科6属7種(沈水植物:4種、抽水植物:3種)が確認され、ササバモの出現回数が最も多かった。沈水植物は右岸・左岸で多く出現し、抽水植物は右岸際、左岸際で多く出現した。さらに、優占種であるササバモの在不在、沈水植物の在不在、抽水植物の在不在を目的変数、各環境要因および調査地点を説明変数として一般化線形混合モデルをそれぞれ構築した。ササバモの在不在については礫の有無に正の効果があり(p=0.011)、抽水植物の在不在については水深に負の効果があった(p=0.004)。霞ヶ浦に流入する桜川他では、ササバモは、水深が浅く、流速が早く、砂が多いことが重要とされたが、大谷川では礫が多い場所が生育に適していると考えられた。このことから、ササバモの生育環境は砂から礫にかけ広く、河岸際で水深が浅く、抽水植物が優占する箇所にはササバモを含めた沈水植物は生育しづらいと考えられた。