| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-225  (Poster presentation)

日本産ミジンコ属の多様性と分布:DNAバーコーディングの結果から 【B】
DNA barcoding of the genus Daphnia (Crustacea: Cladocera) in Japan 【B】

*牧野渡, 大槻朝, 丸岡奈津美, 占部城太郎(東北大学)
*Wataru MAKINO, Hajime OHTSUKI, Natsumi MARUOKA, Jotaro URABE(Tohoku University)

湖沼生態系のキーストーン種として知られるDaphnia属(ミジンコ属)は、形態の可塑性が著しいため種判別が非常に難しい。そのため種判別に分子系統解析が用いられるようになり、その結果、ミジンコ属の分類は世界的に再整理されつつある。本研究では、日本産ミジンコ属の分類をDNAバーコーディングと形態解析の双方から再検討した上で、種ごとの地理分布を包括的に整理した。また近年の分子系統解析以来、新参異名とされた学名も多いため、日本国内のミジンコ種の命名についても整理を行った。2003年以降に日本各地から採集されたミジンコ属は合計で17種にのぼり、これらから得られたDNA塩基配列を国際データベースと比較したところ、1)日本だけでなく欧米を含む広範囲に分布する5種、2)東アジア固有の8種(6種が日本固有種)、3)外来種の可能性がある4種(1種は実験生物)、に区別された。つまり日本の種の半数は東アジアの固有種であり、生物地理学での旧北区の東部温帯域がミジンコの種多様性のホットスポットであるという最近の知見を裏付けた。日本固有の6種は、山岳地帯の湖沼に分布する5種と、低標高地域のため池に分布する1種に大別された。従って、ミジンコ属の種の多様性を保全するためには、人為影響が比較的小さい山間部の水域だけでなく、人為影響を受けやすい低標高地の水域にも注意を向けることが必要である。


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